↓下に行くほど新しくなります。


5月よりこのコラムのページで埼玉県比企郡鳩山町にて行われた住宅再生のドキュメントをお送りしています

題して 「賢い住まい 再生住宅物語 鳩山編」
前半部分 工事着工までの目次をご紹介します

@ テレビの人気リフォーム番組「ビフォア・アフター」
A 再生住宅はそこまでやりますか?
B 住まいの常識は資産作り?
C 住まいを無理なく手に入れる。
D 半値・八掛け・二割引
E 私たちの超わがままな希望を条件に物件を探そうよ・・・
F 帯に短し、たすきに長し
G テレビ番組ではあるまいし、こんな家があるのか・・・・・絶句
H わがまま条件の交渉成立
I 既存建物調査開始。
J 解体開始    ぞくぞく現れる驚愕の実情
K 解体現場の見学会
L 再生プランと予算の設定にかかる。

工事着工以降も続きます。お楽しみに・・・

半値・八掛け・二割引       2004/6/11

とっても大切なことですからもう一度いいますね。
それでは今後、初めての人はどのような住宅計画を持つべきなのかです。
それにはよいお手本があります。

英国では、建築構造の違いがあるとはいえ、築70年の建物が新しいと認識され、最初に建物を所有するのは、ほとんど古い建物を自分で手直しして住むのが普通です。

それに比べて日本は、15年もしたら建物価値はゼロ。
まだ下がり続けているとはいえ土地価格のみと考えればよいことになります。今まで住んでいたわけですから住めない建物ではないはずで、それが、ゼロ、または破格の値段で手に入れることができるのです。

これは、欧米では考えられない日本の特殊性なのです。
この特殊性を逆手に取ると、それこそ、リスクゼロでアパート家賃並みでアパートより広い「土地つき建物」を手に入れることができます。
あとは、自分の予算の範囲内で好きなように時間をかけて、家族構成に合わせた住宅づくりを楽しめばいいのです。

今も続いている地価の下落によって、この15年以内に土地を買った人には信じられないほどの価格に自分の家がなっている。
いやもっと下がっているのが実態で、私のように86年、バブルの直前に土地を買ったものにとっても購入時の価格よりも20%以上安くなっているのです。

どれくらい安くなっているか、バブルのピークと比べてみるとよくわかる。
川越の郊外の住宅団地にある我が家は、ピーク時は「なんと坪100万」といわれたのです。たった5年で、買った価格の倍以上になったことになります。

売却して手元に現金を持っているわけではないのに、なんとなく豊かになった気分、
気持ちが大きくなり、買い物もしてしまうのは当たり前です。
しかし、世の中でよく言うようにあがったものは下がる。

今は、「半値、八掛け、二割引」 むむむむむむむ・・・
まったくそのとおり、現在の価格は坪○○万円。
計算してみれば誰でもわかるでしょう。

それでも、私はいいほうだと思っています。
多くの人は、残債のほうが売却価格よりも多いはず。
それこそ、資産ではなく負債をこの期間作ってしまったのではないでしょうか。けれども、自宅を売って別の自宅を手に入れる人にとっては、自宅は下がっても購入する物件も同様に下がっているから影響ないし、新規に土地建物を求める人にとっては購入し易くなったのではないでしょうか。

既存住宅はもっと手軽に、しかもリスクなく手に入れることが可能になったのです。時間をかけて再生することができれば、こんなに良いことはないといえます。

そもそも、「私の言う再生住宅」と○○ホームの「新築そっくりさん」とどこが違うのか、そして大規模増改築とどう違いがあるのか、それがわからないという。
既存の建物を解体して新築するのが仕事の会社を17年経営している。しかし、考えてみれば解体される住宅の一部始終を見取ったことはない。
これって、少しおかしくないだろうか。

建築してから20年・30年を経過した建物はどこがどのように傷んでいるのか、また、どのように手入れをされてきたのか、それが寿命にどんな影響を与えているか、などなど、確認するには最高の現場のはず。

解体現場から「新築住宅の対策が見えてくる」そんな気がしたのです。
すでに数件の大規模増改築を手がけてきた私のつぶやきが、現実を帯びてきた。

E 私たちの超わがままな希望を条件に物件を探そうよ・・・ につづく・・・

私たちの超わがままな希望を条件に物件を探そうよ  2004/6/14

建築してから20年以上の家。
できれば環境のよい住宅街で、できるだけ安く購入したい。

虫のいい話ではあるが、これは住宅購入者の共通の希望でもあるはずです。
買うと決めたら、不思議なもので中古物件の広告にやたらと目が行ってしまいます。本田社長も私も、毎日入ってくる新聞広告を集めたり、不動産情報の検索をしてみるのですが、再生しようと思うようなこちらの希望に合う物件がなかなかありません。それでも、多くの物件を二人で見に行きました。

「なかなかないものだね」

「最近は、内容はともかくとして安い建売が増えていますから、再生したときの総額と
比較すると難しいことになりそうです」


「確かにそれは言えている。内容は別として新築住宅と再生住宅ではお客様の判断は新築になるかもしれない」
「まして、完全な再生住宅ともなればそれなりの費用がかかるはずだから、すこしでも中古住宅は安く購入する必要があるね」

売主は、できるだけ高く売りたいだろうしこちらは少しでも安くしたい、不動産の購入は難しい。

「話は変わるけど、本田さんは自分も中古住宅を探しているそうだけどなぜなの」

「実は、娘が飯能にマンションを数年前に買って住んでいます。将来的には娘たちの近くに住みたいと思っていますので、近くの中古住宅をさがしているわけです」
「ただ近くに住みたい、しかし同居の二世帯住宅は何かと問題がありそうなのでいやなんです」

「それで、マンションの近くの中古住宅を探しているのか」

「そうなんですが、なかなかこちらの思うような手ごろな物件はないものですよ。価格もさることながら中古住宅ですから、地震に対して大丈夫なのか、土台や柱、梁はどんな状態なのか、シロアリは・・・・・設備のよりも目に見えない部分に不安を感じてしまうような建物が多いのではないでしょうか」

「本田さんが感じた不安はそのまま中古住宅を購入する人たちの不安かもしれないね。たしかに、中古住宅の中には、外壁や内装などリフォーム済みと表示した広告もあるけれどその費用は当然売価に影響しているわけで、ましてや自分の趣味じゃない仕上げなどされていたことには買う気にもならないよ」

「しかし、不動産業者はリフォームをしたほうが売りやすいと考えているようですよ」

「それは、その通りだと思う、物件を探している人にとって最初の印象は大切だから汚い状態よりきれいにされていたほうが買おうという意欲は高まるから。
私たちは、プロだから現状のありのままを見て今までどのように使われてきたのか、どんな部分に問題があるのか判断する癖がついている。
その意味では、変にお化粧されてごまかされるよりありのままのほうがありがたいね」
「それにしても本田さんにとって二世帯住宅は、まったく検討する価値がないの?」


「二世帯住宅を作るとすれば、こんな仕事をしているとしても総額では3000万はかかります、それこそ会長の話ではないですが土地が資産で建物は消耗品と考えられている日本では、土地は増えるわけではないので資産より負債のほうが増える結果になりますから」

「たしかに、それはいえてるね。私も本田さんと同じように息子が近くに住んでいてくれたら嬉しいのだけど、今は札幌のマンションにいるからどうしようもない。
幸いにして、そのマンションは中古で購入し残債もほとんど残っていない。賃貸にまわせば家賃としては八万円ぐらいになるそうだよ」
「近い将来、川越に来るかもしれないので私も本田さんと同じように、探し始めています」
「本田さんのお嬢さんは、マンションを売却してあなたの近くに住む予定は組めないの?」


「それが、マンションの売却は無理なのです。残債のほうが売却できる価格を大幅に多いと思われるため売るに売れないんですよ」

「それは、大変だね。でも普通の人はお嬢さんとまったく同じ状況だと思うよ」
「新築建売を買った人やこれから買う人も、おなじことになるね。
私たちの近い将来のことを考えても今回の中古物件の購入はよい経験になりそうだ」

「そうだ、私たちが希望することを満たす地域に絞り込むことにしようよ」


私たちと同じ希望を持つ親の多い地域。
近くに住むかもしれない子供や孫のことを考えたら住宅環境がよくて学校が近いこと、そして二世帯住宅の新築費用と同じ価格で土地も建物も手に入れることができること。
この近くでこれらの条件を満たすことが可能な地域といえば「鳩山ニュータウン」
住み替える人も多いし、私たちの会社で二世帯住宅を建てている。

中古住宅の購入地域を絞り込むことはできたが、こちらとしては欲がある。地域全体の環境は、申し分ないが一つ一つの住宅の条件は違うから、もっともっと  ほしい条件を出してみることにした。

まず、価格。価格がすべてではないがでも一番大切なものだから。
できれば、1000万前後で、土地は60坪以上ほしい。
大型の車一台と、カローラクラスが置ける二台分の駐車場が取れること。
もちろん、子供のための自転車置き場も確保したい。
丘陵地帯の分譲地だから、景色を楽しめるロケーションの場所がいい。
再生後の建物は、40坪ぐらいにしたい。
最先端の住宅に再生したい。
そして、総額は3000万円まで。そう二世帯住宅を作る場合の費用程度で、これらの条件を満たせたら・・・・・・・・・・

欲張りな条件だけど、どうせやるなら目標を高いところに置くことにした。

F 帯に短し、たすきに長し につづく・・・

帯に短し、たすきに長し       2004/7/1

条件を絞ることで、物件探しは明確になりました。でも、こちらの条件を満たすものは当然のことながら、ほとんどない。

もともと この団地の初期の計画では敷地内駐車場の予定がされていないのです。30年以上前の団地の造成計画としては上下水道はもちろん学校や幼稚園、スーパーなどの施設も含め道路や電柱などよく作ったものだと感心するのですがここまで車社会になるとは想定していなかったのでしょう。

今では、一家に一台ではなく複数の車があるわけで宅地のみで構成されている鳩山の場合、月極駐車場も近くにはありません。
だからこそ、バスや電車の便が埼玉県の北部でありながら充実されているのでしょう。

しかし、駐車場に関しては最低二台は確保することが今回の再生住宅の条件だと考えていました。時代が変わっているわけですから現在の生活に合わせて確保したいわけです。
ただ、土地の造成が平地であれば住まいの配置によって確保できる可能性はあるのですが、それでも車庫として庭を狭くするし、傾斜地ではカルバート(地下車庫)一台程度がやっとで多額の費用が建物以外にかかってしまうことになります。

地価とのバランスが悪くなり、これも購入の阻害要素のひとつです。
ある鳩山の物件は、価格は高いが外観のデザインもよくて間取りもあまり大きな変更を必要としないほど広告を見た限りでは思ったのですが、いざ、実際の建物を見ると床はたわむし、玄関の上がり框は、ブスブスに腐っていた。
基礎の内部を見るまでもなく土台や柱がシロアリなどの被害にあっているようだ。

反対に「価格が手ごろかな」と思えば家から見えるのは周辺の建物だけだったり、敷地が二台分の車庫ができない状態とか土地が狭かったりでそれこそ「帯に短し・・・・」の物件しかない。

周辺の土地相場は、一坪あたり、ほぼ20万プラスマイナス2万円で、建物が新しければ建物価格が上乗せになっている。
こちらは、古い建物でなければ購入する価値はないわけだから、おのずと土地評価から見た価格で判断することになります。

ロケーション、これは人によって評価の分かれるところ。高台の好きな人もいれば、平地がよいという人もいる。
今回は、周辺の景色を楽しめる住宅にしたいわけだから、高台それも角地が望ましいことになります。
角地であれば駐車場が二台取りやすくなるから物件の絞込みも具体的なります。このように条件をかなり絞り込んでしばらくたったとき、知人の不動産業者から売り物件の紹介がありました。

「価格は、1050万で建物価値はまったくみていません」
「ただ、土地も広くロケーションやカルバートの大型車庫がついています」
「既存建物は、初期に分譲された建物を住まい主があとから増築して、面積は40坪になっています」

「田原さん、現場を見たいのですができますか?」

「持ち主は、同じく鳩山ニュータウン内に転居していますので、現在は空き家ですから鍵を預かってきます」

「それから、土地の謄本と建物謄本を用意してください」
建築した時期や増築した時期が履歴として乗っているし権利関係を確認するためにも最初にすべきことです。

「現場で建物を見るときに用意してくださるとありがたいのですが」

「わかりました。用意しておきます」
「ところで会長はプロですから大丈夫だと思いますが、住まいの内外は相当ゴミなどがあります、了解していてください」

「わかります。それは心配しないで結構ですから明後日の一時、現地でということでどうですか?」

「結構です。それではその時間に現地で落ち合うことにしましょう」
こんなやりとりがあり、現地はその前日に前もって見ておくことにした。


   鳩山ニュータウン全景の空撮写真

G テレビ番組ではあるまいし、こんな家があるのか・・・(絶句) につづく・・・


  テレビ番組ではあるまいし、
          こんな家があるのか・・・絶句
 2004/7/10

本田社長と一緒に早速現地を確認。
遠くから最初に見た現地は、北東の角地に立っている建物はまだまだ十分に使えそうな様子。
建物の近くに言ってみると玄関の周囲はゴミ袋が散在している。
植栽は伸び放題でまったく手入れされている様子はない。

         
            当時の様子 外観 (2003.7)

東道路のカルバート(半地下車庫)には・・・・・・
なんとトラック一台分以上のゴミの山ができている。
南の庭は、物置が腐ったまま放置されています。

「ここに住んでいた人は、引越しのときにゴミをそのままにして出て行ったのかな」
「それにしても、すごいゴミの量だね」
「これでは、中古としてみる人の印象は最悪かもしれないな」
「中が見れないからなんともいえないけど、どんな様子なのかな」
「明日になればわかるよ」
「どっちにしても、この植栽は伐採しなければいけないな」
「価格的に折り合いがつけばカルバートを作る必要もないし、間取りを変えれば小型車一台分の車庫は作れそうだね」

売却価格は1050万というのだが、周辺の物件より価格は安い。
今年の路線価からみ手も割安である。

ただし、解体工事費用を200万と見積もると1250万プラス手数料になってしまい、特別に安いとはいえないため指値をすることにしました。
この価格であれば購入する方向で決めることにした。

翌日、田原氏と現地で落ち合う。
「汚れているでしょう。こんな現場はいまどき珍しいですよね」
「担当が違うため、なかは、どうなっているか私も今日が初めてなんですよ」
恐る恐る玄関の鍵を開ける。

「なにこれ、家中がゴミの山じゃないか」
「これは、スリッパでは歩けそうもないな、悪いけど土足で上がるよ」
使わなくなった家庭用具ばかりか、服や日常のゴミまでそのままにしてある
「片付けなかったのかね。二階はどうなっているのかな」
「玄関は、いまにも抜けそうにブカブカするな。ここも、上がり框が腐っている」
「それにしても、変な間取りだな」

          
                室内の様子  1F 


「ともかく2階を見てみましょう」

「おお・・・階段はフワフワしてる。ここも腐っているね」
「階段の踊り場から見る北東の景色はいいね」
などといいながらに2階にあがってみると

「すごい。1階以上にゴミの山じゃないか。どうなってるんだろう」
「あれ、二世帯住宅だったのですかね、2階にもキッチンや風呂があるよ」
「それにしても、建物の内部は外観からは想像できないほどひどいな」

         
                室内の様子  2F


「これでは、売主は更地にしておいたほうが売りやすかったのと違いますか」
「ここまで家の内外をゴミの山にしておくことができるのが不思議だな」
「住まいに愛着がなかったのでしょうね」

「建物の価格は、交渉することにして売主には最低限このゴミだけは処分してもらう必要があるな」
「ところで、謄本を見せてくれますか」
「あれ、1階面積三坪?それでいて2階は20坪になっている。これは別荘のように1階に玄関と階段だけをつけて2階に最初から生活空間があったようだね」

「聞くところによると、これと同じような間取りの建売がかなり売られていたようです」

「そうすると、1階はあとから壁や床を作ったことになるね」
「どちらにしても、私たちは大規模な再生を考えているからいいけど」

価格の交渉をしてもらうことにした。
不動産手数料もかかるし、名義変更の費用などの雑費を考えるとこちらとしては総額で当初の売却価格以内に収めたいところだ。
もちろんそれ以下であれば言うことはないが、ここは妥当なところを提示してみよう。
「田原さん、売主さんに駆け引きなしで伝えてください。ゴミの処分は当然として、価格は980万であれば購入したいと思います」

大切なことは、いくらであれば明確に買う意志があるかハッキリと伝えること。
「一日二日、時間をください。ご連絡しますから」
「わかりました。建物はリフォーム程度ではまったく使えないが、再生してみたいので楽しみに待っています」

それにしても、ここまで家を汚くできるのか。
ありのままの家を見ればその家の手入れがどのようにされてきたか想像できます。
それは、そのまま見えないところの状況を映し出す鏡ではないでしょうか。
その意味でも、この家はひどかった。
普通の人は絶対買わない家ですね。


H わがまま条件の交渉成立 につづく・・・

わがまま条件の交渉成立       2004/7/15

翌日には、田原さんから連絡が入った。

「売主さんは、その価格で了解しました。もちろんゴミについても撤去します」

「ご苦労様でした。ところで決済日はいつにしますか」

「ゴミの撤去に時間がかかりそうなので一ヵ月後ということでいかがでしょうか」

「わかりました。具体的な日時や場所については再度ご連絡ください」
「ところで田原さん、初の仲介おめでとう」


田原さんは、当社に在籍していた住宅営業の社員でした。
若い人たちのなかでも、目標を明確に持っていた社員ですが、二級建築士の資格を当社で取ったあとに不動産の勉強をしたいといって、不動産会社に勤務したばかり。やめるときに、会社が中古住宅を探しているので「最初の仲介になったらいいね」と話していたのです。


「ところで、あのお宅のご家族はどうしているの?」

「30年以上前に、当時は若かったご夫妻と子供さんで入居されたそうです」
「お年を召してからご主人のお体が不自由になったため1階を増築しバリアフリーにして二世帯住宅にしたようですが、ご主人がお亡くなりになり同じ団地内に住む若夫婦と同居することになり売却に出されたようですね」


30年以上たつ団地では、当時の若い世代が定年を迎え老人世帯が中心となってしまっている。この期間には、それぞれの家族にそれぞれの人生の変化があったのです。

「そうですか。持ち主さんのためにも見事な再生住宅にしたいものです」

契約は、不動産会社の事務所で済まし、
決済のときに売主の若夫婦にお目にかかりました。

「お近くに住んでいるのでしたら時々工事現場においでください」
「すこしでも、元の形を生かした再生住宅にしたいと考えていますから」
とはいったものの、あそこまで傷んでいる家をどこまで現状を生かして再生できるか正直自信はなかったのです。

今までの再生住宅の場合、住み主が手入れを適切にしていた家が多くかったため、外観デザインは変わっても使える部分が相当あったわけですが、「今回はそうもいかないだろう」と半分覚悟していたのです。

とにかく、引渡しが終わったわけだから早速既存建物の調査を開始して建物の状況を正確に把握することにしました。

I 既存建物調査開始 につづく・・・

既存建物調査開始         2004/7/22

「最初に植栽の伐採をしてください。現状では調査することができないと思うから」

「植木屋を手配しますか?」

「いや、今回だけは詳細の調査をするためにも最初から自分たちでやってみようよ。伐根はあれだけの木だから無理だと思うので作業に邪魔にならないところから切ろう。それが終わったら、既存建物検査協会の本部にも連絡して共同調査をすることにしよう」

伐採をすませて結構敷地の周りはすっきりとした。

      
         伐採作業中の様子



検査マニアルに基づいて周囲の調査から開始。

「会長、シロアリのアリ道があります」
「建物もシロアリにやられている可能性が高いかもしれませんね」


「そうだね、住んでいた人はシロアリ消毒をしていなかったようだから被害にあっている可能性は高いと思う」
「ま、どちらにしても調査すればその程度はわかるだろう」


「地質の検査は、土が固くてほれません」

「この土地は、埼玉県でも秩父地方の次に古い地層だそうだよ」
「もとは、山を造成したのだから当然盛り土の部分と切り土の部分があるだろう。どっちにしても、硬いのは仕方がないな。それでも、なるべく土の内容は把握したいから大変だろうけど掘ってみてください」
「それと、この団地で過去に3軒家を建替えしています。そのとき地盤調査のデーターが会社に残っているはず、これらも参考にしよう」


比企丘陵は秩父の次に古い地層で構成されています。
この団地に住む人の話では、地震の揺れもあまり感じたことがないとのことで、建物としては、最適な土地といってもよいでしょう。

「土はいいとして具体的にまず、基礎の内部や小屋裏の調査をやることにしよう」「長谷川さんと保坂さん、それぞれ手分けして内部調査にかかってください」「辻さんと、川井さんは建物の水平と垂直をレーザーで調べてください」

ふつうは、二人一組で時間をかけながら調査を進めますが、今回は自社の物件
いままで以上に、多くの人に現場を体験させて見たいと考えていました。

「会長、床下は乾燥していますが基礎が変です。高さがばらばらに作られているようなのですが」

「増築したときに、基礎も追加で打設しているからだろうけど、床はどちらにしても剥がすからそのときにもう一度確認しようよ」

「それ以外に気がつくことはありますか?」
「どうも、シロアリにやられているようです」
「シロアリの道があるくらいだからすこしは被害にあっているのは仕方ないね」

実態は、あとでわかることですが想像を絶する内容だったのです。
「保坂さん、小屋裏の様子はどうなっていますか?」
「特に、問題はないと思います」
「屋根も交換するようですから、そのときに再度検査しましょう」

実は、小屋裏の木材までシロアリの被害が広がっていたのですが、そのときは目視であったためわからなかったのです。
土台や床下の検査や屋根裏の検査の多くは目視によるものが大半を占めていて木材の状況や釘金物の詳細まで綿密に検査できているかというとそうでもないようです。

壁の内部は、外または内部を剥がして調査することになります。
既存建物検査のマニアルでは、外部の床上1メートルをカッターで切り取り土台や柱、筋交いの状況をまず検査します。

今回の建物は、外壁がモルタル仕上げになっていますから丸ノコで切り取るわけです。まず、北西の風呂場と洗面所付近を剥がします。

「保坂さん、3メートル程度の幅でカットしてください」
「ここは、普通一番腐りやすい場所だからまずだめだと思うけど・・・」


外壁のモルタルが、けたたましく、ホコリを出しながら切断されていく。
あらわれた壁の内部は、柱の根元は完全に腐り、筋交いは半分以上なくなっていた。
もちろん土台はシロアリにやられ指で少し押しただけでつぶれてしまう。

        
          耐震調査  写真← 外壁カット作業
                  写真→ シロアリに食荒らされた土台・柱


そして問題は、基礎の増設部分にフーチングといわれる土に埋まった大切な部分がないことで、土台を乗せるためだけの役割しかしていない。
あとでわかったことだが、形はテトラポットのような巨大な壺基礎で建物を支えている構造に作られていた。

J 解体開始 ぞくぞく現れる驚愕の実状 につづく・・・

解体開始 ぞくぞく現れる驚愕の実状     2004/7/30

「外周部はその程度でいいと思うから、とにかく中を解体してみよう」
「あわせて、内部の壁と天井をはずして構造材が見えるようにしよう」


「業者を呼びますか?」

「いや、それはもう少しあとにしてできる範囲は自分たちでやってみようよ」
「ただ近隣にゴミでご迷惑をかけないように、伐採した植木といままでのゴミは搬出するように手配してください」

最近の工事現場は、神経を使ってもクレームが出ることがあり工事の時間帯や工事車両のおき場所も当然のように気を遣わなければならない。

「まず、最初は天井だね。危ないから2階からはじめようか」
一番建物の状態がよいはずの2階内部の柱にシロアリの被害があり、それは小屋裏の梁にも被害が及んでいた。

土台から、1階の柱、梁そして2階に続くわけだから、1階を剥がすまでもなく被害の状況が想像できます。
それにしても、2階の部屋の真ん中になぜ・・・。

内部でさえこの状態としたら、ほかの部分はもっと被害にあっているかもしれない。社員でこれ以上進めていくのは、危険がありそうだ。現場管理者の浅見さんに手配をしてもらうことにした。

      
     写真← 2F内部解体の様子     写真→ 蟻道 柱中央部分

「浅見さん、解体業者ではなく大工を三人ほど手配してください」
「なぜ大工を手配するのですか?」
「古い建物が、年数を経てどのようになっているのかは解体業者は知っているかもしれませんが大工は私たちと同じように知らないと思います。再生するときに、現在の状況をよく理解していれば同じようにならないための知恵や工夫も生まれます」
「それと、本当に骨格だけにする解体はある程度進んだときに崩壊する危険性があるでしょう。解体するために、一部補強をしながら進めていかないと危ないと思いますよ」


数日後、大工も参加して骨組みを残しての解体工事が進むことになりました。
道具もあり経験も豊かな大工は、なにより手際がいい。作ることを知っているということは、どこを最初にやれば、ここの解体が進むかの勘所を押さえているのだろう。
見る見る間に、骨組みが明らかになっていく。
それにあわせて、膨大な量のゴミの山。

ここは不思議なことだけど、壊すことの手際のよさとゴミ処理の手際とは同じではないようだ。解体業者は、どうすれば一台の車に効率よく乗せられるかだけでなく、最終処分のコストまで考えて解体手順を決めていくのだが、大工はそこまでは考えない。
どうしたら、目的の構造材を早く表しにできるかだけを考えて工事を進めていく。

あるとき、大工の手がピタットと止まった。
「会長、このままでは建物が崩れます」
これ以上、作業を進めることは危ないというのだ。

「どうしたの?」
「玄関側の柱と梁が完全にシロアリにやられています。よくこの家が持っていたものですよ」
「外壁のモルタルだけ、人間で言えば骨はボロボロだけど皮が残っているから形になっていたようなものです」

言われてみると、最初に造ったときの柱や梁はシロアリと腐りで一本として正常のものはない。とくに、北東の角にある通し柱は、三分の一も残っていなかった。

昔の建売だから、使われている柱の太さも細く、現在は流通していないサイズである。梁にいたっても、大切な部分ほどシロアリでブスブスになってしまっている。
解体作業を進めていくためには、新規に別の木材で倒壊しないように補強しながら進める必要が出てきました。

「棟梁、わかった。今日はここまでにして明日補強材を用意してから続けることにしよう」土台は、古い部分は完全に使えない。

増築した部分の土台については、青森ヒバが使われたようで表面の白い部分は多少シロアリにやられているものの、おおむね大丈夫なようだ。
それにしても、木材によって被害状況がこんなに違うものかと驚かされる。どちらにしても、すべての土台を交換することになるが、そのときは青森ヒバを使おうと決めた。

すべての構造体の状況が現れてきて、屋根の母屋や垂木も曲がっているのやらシロアリにやられたりで交換する必要があるようだ。

基礎も、フーチングがないのと高さが不ぞろいのため内側に作り直して補強が発生する。
「会長、使える材料は一つもないよ。これだったら新築したほうがよさそうだけど」 私も含めて全員納得の意見だが「再生住宅」ということでスタートした現場だ。最悪の再生現場であるからこそ、ここで得られる経験はほかには変えがたいのだ。

しかし、当初の予算では追いつかないことは間違いなさそうだ。
また道楽といわれる覚悟をしなければいけないかもしれないと思うと少し気が重い。想像した以上にひどい状況が明らかになった。

当初の予定期間では当然無理だし、費用もかかることだろう。
しかし、ここで得られる経験を次に生かせると考えれば最悪であったからこそわかったこともある。
それは、いままで住んでいた人が愛着を感じながら住まいの手入れをこまめにやってきたのか、それとも手入れもせずに壊れるままに任せてきたのかで建物の見えない部分も想像できるということ。

そして、住んでいる人に造ってから現在まで住まいに関する履歴を聞くことがなによりも大切なことと得心したのです。
お医者さんが最初の患者に聞くように住まい主の話を聞くことは大切なことですね。そのうえで「既存建物の詳細検査」をしていけばかなりの部分がわかるでしょう。
教訓。

I 解体現場の見学会 につづく・・・